
あなたは仕事中何%立っていますか?センサーで1日の動きを計測した結果、シェフはなんと87%と判明。
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はじめに
現代の職場では、多くの労働者が長時間の立ち仕事を強いられています。実際、約60%の労働者が立ち仕事を伴う職業についているとされています。しかし、長時間の立位作業は筋骨格系疾患や慢性静脈疾患、さらには心疾患のリスクを高める可能性があることが研究で示されています。本記事では、英国サルフォード大学の研究「Exploring Occupational Standing Activities Using Accelerometer-Based Activity Monitoring(加速度計を用いた職業的立位活動の探索)」を基に、立ち仕事がもたらす影響と、それに対する対策について解説します。

研究の概要
立ち仕事の実態と問題点
本研究では、シェフ(10名)、獣医師(7名)、オフィスワーカー(9名)を対象に、加速度計「ActivPAL」を使用して、勤務中の動きを測定しました。その結果、以下のような事実が明らかになりました。
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シェフと獣医師はオフィスワーカーよりも立位時間が圧倒的に長い。
- シェフの勤務時間の87%が立位獣医師は70%が立位オフィスワーカーは29%が立位
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獣医師の62%は「静的立位」、シェフはより動的な動きをしていた。
- 獣医師の立位時間の62%が「静的立位(ほぼ動かない状態)」シェフは「静的立位(23%)」「体重移動(29%)」「小刻みな動き(23%)」「歩行(25%)」とバランスよく分布
- 立位時間の長さと動きの違いは、身体の負担に影響を与える可能性がある。→ 図4: 各参加者の勤務時間中の立位・座位の割合参照


静的立位と動的立位の違い
研究では、「立位」の定義が職業によって異なることが明らかになりました。
- 静的立位(Static Standing):足を固定した状態での立ち仕事。獣医師の62%がこの状態に該当。
- 体重移動(Weight Shifting):両足を地面につけたまま、体重を移動する動き。
- 小刻みな動き(Shuffling):足を小さく動かすが、前進はしない。
- 歩行(Walking):前方への移動を伴う動作。
この違いは、筋肉疲労や足の不調に直接影響を与える可能性があります。静的立位は血流の停滞を引き起こし、筋肉疲労や痛みを増大させることが分かっています。
→ 表1: 研究で定義した活動の種類とその特徴参照

立ち仕事による健康リスク
1. 筋骨格系疾患(MSDs)のリスク
長時間の立位作業は、腰痛、膝痛、足の痛みを引き起こす可能性があります。特に静的立位が長い職種では、下肢への負担が大きくなり、筋肉の疲労が蓄積しやすくなります。
2. 静脈疾患と心疾患のリスク
- 長時間の立位は**慢性静脈疾患(CVDs)**のリスクを高め、静脈瘤や血流障害を引き起こす可能性があります。
- 心疾患との関連も報告されており、75%以上の立位作業を行う労働者は、より高い心疾患リスクを抱える可能性が示唆されています。
立ち仕事の負担を軽減する方法
1. 定期的な体重移動や歩行の導入
研究では、シェフのように静的立位だけでなく、歩行や体重移動を組み合わせた動作が、筋肉の負担軽減に役立つことが示されました。そのため、30分ごとに少し歩く、作業中に体重を移動するなどの工夫が効果的です。
2. 適切なフットウェアの選択
適切な靴を選ぶことは、長時間の立位作業による負担を軽減する重要な要素です。
- クッション性の高いインソールを使用する。
- 足首をサポートする靴を選ぶ。
3. 抗疲労マットの活用
立ち仕事をする場所に抗疲労マットを敷くことで、足腰の負担を軽減することができます。特に静的立位が多い職種では、有効な対策となります。
4. 作業環境の改善
- デスクや作業台の高さ調整:無理な姿勢を防ぐ。
- 座る機会を増やす:短時間でも座る時間を確保する。
まとめ
本研究では、職種によって「立ち仕事」の動作に違いがあり、その違いが健康リスクに影響を与える可能性があることが明らかになりました。特に、静的立位が長い職業では、筋骨格系疾患や静脈疾患のリスクが高まるため、適切な対策が求められます。
今すぐできるアクションプラン
- 30分に1回は歩行や体重移動を行う
- クッション性の高い靴や抗疲労マットを活用する
- 作業環境を見直し、座る時間を確保する
立ち仕事の負担を軽減し、健康的な職場環境を実現するために、今日からできることを始めてみましょう。